映像作家・山本篤とのコラボレーションで初のサウンドインスタレーション作品。真っ暗な展示空間に充満するスモークマシーンの煙が白熱灯の微弱な光をさらにぼかし、鑑賞者は空間の輪郭をうまくつかめない。また、空間には複数のオリジナルのラジオドラマが大音量で同時進行しているために、鑑賞者は自分が今どこで何をしているのかわからなくなっているような混沌とした状況に陥る。ラジオドラマは、舞台も、登場人物も、話の内容も多種多様で、誰かの会話を盗み聞いているような、他人の人生を覗き見ているような気にさせる。さまざまな時間が同時に進んでいること、また、意識を向けないとその一つも拾い出すことができないというのも、この作品空間の設定自体がこの世界の在り方を示唆していると思わせる一つの理由だろう。1階のカフェスペースには仮設的なラジオドラマの録音ブースが設置され、週末のイベントでは、共に柴田・山本が執筆したオリジナルの脚本を来場者と共に録音するといった試みも行った。